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編集長のブログ45 歯科医師の重要性をアピールすることが必要

 口腔内の専門職である歯科医師の重要性を、今まで以上にアピールしていく必要がある

 5月31日厚生労働省において、第39回費用対効果評価専門部会、第133回薬価専門部会、第352回総会)が開催されました。中央社会保険医療協議会での議題「歯科医療(その1)について」において、遠藤秀樹委員(日歯常務理事)は以下のとおり意見を述べるとともに、質問を行いました。少し長いですが、非常に重要なテーマなので是非全文をお読みください。

 歯科においては、これまで同様に、生活を支える医療として、「口腔機能の維持・向上により、国民の健康寿命の延伸とQOLの改善をはかる」ことを大きな目標としている。その中で、高齢者の外来受療率については、以前に比べて増加してはいるものの、要介護高齢者の7割で何らかの歯科治療の必要性があり、また高齢者の多くが「かみにくい」との自覚がありながら、通院率が低下する傾向が見られる。その理由は、アクセス、意識の問題等が考えられるが、理由が示されているのか伺いたい。また、要介護高齢者の場合は、本人の意向はなかなか把握しにくいこともあるため、本人と家族の意向に違いがあるか等データがあれば、示していただきたい。

 高齢者の残存歯数は、国民の健康意識の向上や8020運動を通じてかなり増加してきているが、まだまだ不十分であり、更なる対応が必要と考える。1人当たりの歯科医療費でみると、一般成人では低下傾向にあるが、小児と高齢者で増加傾向にある。小児は、人口減少の中での増加であり、う蝕の減少の中でも健康意識が高まってきた結果であると思われる。高齢者は、医療単価(1日当たり歯科医療費)は横這いであるが、人口増と通院率の改善によるものと思われる。診療行為別調査においては、レセプト1件当たりの歯科医療費は減少傾向が続いているが、補綴部門の減少が大部分を占めている。これは、歯を残す治療や継続的な口腔管理による歯科疾患の軽症化によるものと考えられる。また、義歯の6か月規制や補綴物維持管理料の効果も一定程度含まれると考える。ただ、要介護者や認知症患者が増加する超高齢社会では、現在の社会状況に合わせて、これらの規制に在り方について見直す必要もあると考えられる。

 かかりつけ歯科医機能においては、患者調査の結果から、6~7割にかかりつけ歯科医がいると認識していることが読みとれる。28年度改定では、かかりつけ歯科医の機能を評価していただいたわけだが、患者から「かかりつけ」と認識されている歯科診療所が、必要な機能を果たしていくことが重要と考えており、そのための環境整備や対応をさらに進めていきたい。

 「かかりつけ歯科医機能」の実施状況から見ると、エナメル質初期加算は従来型の処置よりも高い実施率となっている。また歯周病安定期治療も増加傾向にあるが、新規設定されたⅡ型がまだ少ないのは、報酬が新たに包括化されたことが十分に周知されていない面もあると考えられる。また、患者は継続的管理や信頼性を評価しているものと考える。これらは通院患者のアンケート結果なので、この他に「かかりつけ歯科医機能」のもう一つの柱である在宅医療においても「か強診」が積極的に活動している。地域の医療連携においても、「か強診」のほうが積極的で、ミールラウンド等の介護関連の専門的な分野では特に高くなっており、まだスタートしたばかりの状態だが、その機能を果たしつつあると認識しており、さらに推進していく必要がある。

 病院との連携における周術期口腔機能管理料に関しては、主として併設の病院歯科で実施されており、地域の歯科診療所が参加できる環境作りも重要である。300床以上の比較的大きな病院での算定が多いのは、病院歯科の設置の有無が差となっているものと考えられる。なお、都道府県により実施率に差があるが、郡市区歯科医師会レベルでの研修会等を積極的に実施して病院との連携を図っている地区は実施率が高いため、今後の活動の参考にしたい。

 また、周術期口腔機能管理における連携効果として挙げられている全身麻酔の挿管時に歯が折れたり、抜けたりするといったトラブルを防止するためのプロテクター等は現状では評価されていないが、今後、対応の必要がある。

 栄養サポートチームにおける低栄養への対応として口腔機能の改善は重要と考えられるが、周術期同様に比較的大きな病院で、院内の歯科医師との連携で算定されている。周術期共々、地域の歯科診療所と病院との連携にはまだまだ課題があるので、更なる対応を検討していきたい。

 歯周病と糖尿病の関連をはじめとして、医科と歯科とで共同でみていく必要のある疾患が増えているが、しっかり対応できるような体制作りが必要であり、合わせて、医科と歯科の間での情報提供の在り方の検討も必要である。

 口腔機能の維持向上の視点からは、幼児・学童期における「しっかり噛めない・食べられない」という発達不全や高齢者における機能低下への対応が求められる。超高齢社会におけるフレイルの概念の普及と共に、重要となってくる分野で、低栄養に関してもカロリーや栄養素と共に、必要とされる食事や食形態が摂食可能となるように「しっかり噛めること」を目指すなど、効果的な対応を検討していく必要がある。

 これに対して、厚労省より「冒頭、質問のあった高齢者になると外来受療率が下がる件については、主に身体的理由だと思われるが、家族の意向と相違があるかと併せて、確認のうえ、検討・対応したい」旨、回答があった。

 その他、1号側委員より、「全体的に年齢・階級別における残存歯数の増加やう蝕をはじめとする有病率の低下等、歯科の取組みは評価できる。今後、歯科に期待する役割としては、口腔機能管理を行うことによって歯周疾患の早期発見・早期治療、糖尿病等の重症化予防に寄与することが重要と考える。一方、歯科は医科と違い複数の診療所に通院することはなく、1か所に通院を続けると考えているといった意味でも、『かかりつけ歯科医機能』を有しているとも考えるので、地域包括ケアシステムへの参画、医科歯科連携の推進といった体制整備が喫緊の課題であると考える」、「『かかりつけ歯科医機能』については、28年度改定において十分な議論が行われないまま、評価されたと考えている。今回は、しっかり議論を行いたい。

 また、現在、医政局において『かかりつけ歯科医機能』のイメージ等を検討しているのは、順序が逆ではないか。さらに地域包括ケアシステムにどう関わっていくのか不明である。口腔機能管理の評価等は重要であるが、地域包括ケアへの参画状況等においても、確かに『かかりつけ歯科医機能強化型診療所』のほうが、一般歯科診療所より多いことが示されてはいるが、地域の在宅医療・介護を担う医療機関・事業所との連携等を行っていない『かかりつけ歯科医機能強化型診療所』がまだまだ多く、施設要件にそういった連携を組み込むべきであると考える」、「『かかりつけ歯科医機能』に関して、国民の意識と診療報酬上の評価にはギャップがあると考えている。

 国民は、『かかりつけ歯科医機能強化型診療所』という理由で通院しているのではなく、いつも通院している歯科医院が『かかりつけ歯科医機能強化型診療所』であったに過ぎないのではないか。また、歯周病安定期治療を行っても、『かかりつけ歯科医機能強化型診療所』では、患者が望んでいない口腔内写真の撮影が行われたり、患者負担額が違う等、患者のニーズに十分に応じていないうえ、歯科医療機関の差別化に繋がっていると考える。

 一方、高齢化社会の中で口腔機能管理を行い、残存歯を増やしていることは評価できる。今後は、小規模な歯科診療所でも地域包括ケアの中で活躍できる体制を整備していくことが重要であると考える。」等といった意見が出された。

 これに対し、遠藤委員は「『かかりつけ歯科医機能』については、目前に迫っている2025年に向けて早急に対応するための意味合いもあり同時進行で進める必要があったと考えている。今後、さらに検討・対応を図りながら推進していきたい。また、歯周用安定期治療においては、Ⅱの点数が高いのはⅠに検査等が新たに包括されているためで、分解すればほぼ同じ点数である。また、Ⅱを強制しているわけでなく、ⅠとⅡは選択性である。」と回答した。

 また、丹沢秀樹専門委員より、「病院において栄養サポートチームに歯科医師を参画させることは重要であるが、大きな病院で院内に歯科医師が勤務していれば連携も取りやすいが、小さな病院で外部から歯科医師に参画してもらうには、評価が十分でない。一方、摂食機能においても、内科や神経内科だけでなく、口腔内の専門職である歯科医師の重要性を今まで以上にアピールしていく必要がある」との説明がなされました。

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